認証に限らないハラールの理解

2018年7月14日(土)、東京大学農学部(文京区)で開催された国際シンポジウム「ハラール認証制度と認証に限らないハラールをより深く理解するために」に参加してきました。

 

他の用事があって40分ほど遅刻したため、基調講演を20%くらいしか聞けず、スライド配布なし、通訳なしの英語ということで、理解が少し浅いことは否めませんが、ハラール食だけではなく、信仰を持つお客様としてのムスリムへのおもてなしを進める弊社としては、知識や考え方の整理に大変貴重な機会となりました。

 

講演者は、

ハミド アフマド氏

(パキスタン科学技術庁科学 ・産業研究協議会 食品・生物工学研究センター 畜肉・家畜製品研究室 前室長/前主席技官)

後藤 絵美氏

 (東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク・准教授)

 友松 篤信氏

 

 (F&T JAPAN 代表、宇都宮大学名誉教授)です。

 

ちなみに私(中川)は以前東京大学のムスリム学生・職員向けの環境を視察(ブログ)した際に入手した「ハナーンチョコレート」プロジェクトの監修者である後藤先生のお話をいずれお聞きしたいと思っていたので、ちょうど良いタイミングになりました。

余談ですが、今回この講演を知ったのは、講演企画者であり、講演の司会も務めた荒木徹也氏(東京大学 農学国際専攻・准教授)からご連絡をいただいたからです。

荒木氏は18年前に私が国際協力NGOセンターで「グローバルフェスタ」のNGO側の事務局を担当した際にボランティアとして通算1年以上お力添えいただいた事がありました。荒木氏の自宅で当時の仲間で鍋を囲んだことも何度かありました(懐かしい・・)。ハミド氏が日本のムスリムのコミュニティや飲食店のハラール環境などの視察するため案内役を探していた荒木氏が私の名前を見つけてくれたわけです。

ハミド氏の講演(最後の方しか聞けませんでしたが)では、ハラール認証制度がおよぼすノンムスリムによるハラールへの誤解や、ハラールと畜の方法のなかで動物への配慮(Animal welfare)をいかに構築するかなど、イスラムの正当性のみを語ることなく、科学的客観的な見地からの知見を共有していただきました。最後にご指摘いただいた「ビジネス主導の標準化としてのハラール認証制度ではなく、より各国(OIC以外の国も)の制度に根差したハラールに対するシステム、より人間(本来のイスラムである、「神 ー 個人」の関係の中での個々の多様な判断)を尊重したシステムの構築を提言された点が印象的でした。

 

後藤氏の講演では、ハラール認証制度が成立した時点から、DNA検査のような技術進歩や流通分野への適用範囲の拡大によって、ハラール認証の要件が厳しくなってきた状況報告と今後の予測、ムスリムが安心するための認証の代替手段の提案などが行われました。

 

国松氏の講演は宇都宮大学でのムスリム留学生と合同で活動する研究会による栃木県鬼怒川温泉でのコンサルティングなどの実践をもとにした考察、そこから導いた宗教的アプローチと科学的アプローチを提案していました。

 

アカデミックな議論ですので、若干ビジネス(※)としてかかわっている者としては、視点や情報源が異なる点、少し情報が古いと感じる点もありました。現実的な話をすれば、消費者がハラール認証商品を求めている市場では、その状況に合わせないと販売が進まない市場もあります。また、もし日本を議論の対象にする場合、総人口に対するムスリム人口の割合が世界でも最も低い(0.1%程度)状況ですから、在日ムスリムの市場、訪日観光客市場、海外市場に向けた輸出対応での議論も分けて行う必要があると思いました。

 

 ※ビジネスという言葉には「不当な金儲け」と言う意味を込めて使う人もいますが、私は「相手が必要とする価値を提供し、適切な対価をいただく事業」として使います。

 

 

さらに、ハラール認証制度(特に国家が主導する)に影響を受け、ハラール認証の有無を頼りにする感覚が強まる一般ムスリムはそのままにして良いのか、ムスリムがマイノリティである国や地域に向けて出されたファトワ(イスラーム法学者の見解)をどのように扱うのかなど、議論の材料は他にもあるのではないかと考えました。

 

このように、今回の議論は頭の整理に大変参考になりました。

 

 

現在、具体的にどのようなプロセスでムスリムやベジタリアンのお客様へのおもてなしをしていけば良いか、現在考えていることを文章にまとめています。

簡単にできるものではありませんが、今後報告させていただきます。