「イスラム圏とハラール産業」の授業に

朝からしっかりした雨が降る6月24日(月)の東京大学駒場キャンパス。私(中川)は地域文化論Ⅰ「日本・アジア学概論:国際社会で活躍する基盤を身につける」という科目で「イスラム圏とハラール産業」のテーマの講義の一部、ゲスト講師をさせていただきました。
きっかけは昨年夏。東京大学にパキスタンの食品化学・ハラールの著名な研究者を招へいして開催されたシンポジウムがあり、そこに登壇された「日本・アジアに関する教育研究ネットワーク(ASNET)」の後藤絵美先生と、いち聴衆の私が、関係者打ち上げで「ハラール認証って厳しくなっていくほど、ムスリムに不利益がありますよね」とか何とか意見交換したことがご縁で、今回の貴重な機会をいただく事になりました。
パキスタンの博士をアテンドした時の記事はこちら
「ハナーンチョコ」を知っていますか?

実は昨年夏以前から、東京大学コミュニケーションセンターで販売されていた「ハナーンチョコ」がつくられた経緯を知りたかった私は、監修者の後藤先生からお話を伺いたいと思っていました。
※チョコの存在を教えてくれたのは東京大学中東学生会議の富樫さんです。(富樫さんに案内していただいた時の記事はこちら)
後藤先生はハラール産業(注:「ハラール認証そのものやハラール認証を必須と考えて進めるビジネス」の意と捉えてください)の現状に疑問を持ち、メリットだけでなくデメリット(ムスリムとノンムスリム、ないしはムスリムどうしの分断)の原因にもなっていると考え、東京大学ブランドのチョコレートに「大切なのはハラール認証を取ることではなく、相手への思いやりでは?」というメッセージを添えて販売しています。
グループワークのテーマは「ハラール認証制度の対案を考える」

今回の科目では3回にわたり「イスラム」にまつわるトピックで学ぶカリキュラムです。
1回目は大塚修先生による「地域としてのイスラム圏」の授業で、イスラムの多様性から「イスラム圏」と一括りする事の難しさを学び、2回目は後藤先生の「イスラム圏とハラール産業」でハラール認証制度の現状と問題点を学んだうえで、今回が3回目でした。
まず、「前回の授業を踏まえ、ハラール認証に代わる制度を考える」グループワークと発表が行われ、私は講評とグループの中から優秀なアイデアを選ぶ役だったので、11グループの発表をメモを取って真剣にお聞きしました。皆さん、先週習ったばかりなのに、本質を突いた良いアイデアが出ることに驚きます。全体の傾向としては、ハラールか否かを消費者個人の判断にゆだねられるように情報を提供しよう、トレーサビリティシステムを使おう、アプリを使うとの意見が多かったです。現実でもこの方向に動いていますので、おそらく現実的でベストに近い解なのだろうと思います。ムスリムに限らず、誰でも使える要素を盛り込んだアプリのアイデアは特に良いと思いました。
実体験と考えを伝える

続いての40分間(60分程度の予定でしたがグループワークに時間がかかったため)は、「ムスリム向けビジネスの現状と思うところ」と題し、私が普段行っている仕事でのムスリムや日本企業とのお付き合いのなかで感じる、消費者の感覚、メーカー・飲食店側の実情を紹介し、「ハラール産業」の問題がなぜ起きているのか、気づいたこと、感じることをお伝えしました。
そして最後に、学生の皆さんが今後世界で活躍するために、自分とは異なる文化・宗教的な背景を持つ相手と一緒に仕事を進めるため、世界的な宗教(特に一神教)を理解すること、自分が海外でマイノリティの立場を経験して視野を広げることが重要だと思う、とメッセージを送りました。
・・・と書くととても格好いいのですが、実際は事前に色々と考えすぎて情報を取捨選択しきれず、講演時間内にもまとめきれず終了時刻を数分過ぎ、バタバタと話して終わった感じです(深く反省・・・)。
講義終了後、学生さんたちのリアクションペーパーを少し拝読したり、先生の反応をお聞きして、大方の学生さんに話の内容が伝わったようで、嬉しくなりました。
何より、この業界が抱える問題や自分自身の考えやジレンマをきちんと整理することは、今後の業務にとても役立つと気づきました(人に説明しなきゃいけないと、自分の理解が深まりますし)。
次の機会をいただければ、もっと情報を整理して、的確にお伝えしたいと思いますので、お気軽にお声がけください。
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